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再生医療を支える間葉系幹細胞【6】脂肪由来幹細胞
第15回目:再生医療を支える間葉系幹細胞【6】脂肪由来幹細胞
これまで歯髄由来、臍帯血由来、骨髄由来の幹細胞の有用性や歴史について紹介してきましたが、最後に脂肪由来幹細胞について解説していきます。
脂肪由来幹細胞は、2001年に皮下脂肪組織中に骨髄由来幹細胞と同様の性質を持った間葉系幹細胞があることが報告されました。
わずか22年前のことで、そしてこの発見は再生医療を大きく前進させます。
というのも、歯髄由来、臍帯血由来、骨髄由来の幹細胞と比較して優れた点が多々あったからで、例えば再生医療の中心的な存在だった骨髄由来幹細胞と比べてみましょう。
骨髄由来幹細胞は、細胞組織内の約0.01%しかありませんが、脂肪由来幹細胞の数はそれの500倍もの量が含まれており、なおかつ脂肪組織は全身にありますから大量に採取することができます。
次に脂肪由来幹細胞は、骨髄由来幹細胞と比較して臓器の修復に寄与するHGF(肝細胞増殖因子)やVEGF(血管内皮増殖因子)といった成長因子の産生が多く、免疫抑制能も高いという特徴があります。
さらに、高年齢者から採取した骨髄由来と脂肪由来の幹細胞の増殖の時間は、脂肪由来の方が早く増殖するという報告もあります。
そして何より、骨髄由来幹細胞を採取するためには患者の体の負担が大きいのに対して、脂肪由来幹細胞の採取は脂肪組織が体の表面に近いため体の負担は少ないというのは大きなメリットになります。
このようなことから、数多くの治験が行われ、再生医療分野のみならず美容医療分野においても積極的に使用されてきています。特に、再生医療においては既に臓器障害がある疾患や、免疫抑制薬を服用しても制御できない難治性炎症性疾患などに利用されています。
今後さらに治験が進むことによって、幹細胞を用いた再生医療の中核的な存在になることも期待されています。不治の病と呼ばれている疾患が、一刻でも早く根治される日が来る未来はそう遠くないかもしれません。