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再生医療を支える間葉系幹細胞【4】臍帯血由来幹細胞
第13回目:再生医療を支える間葉系幹細胞【4】臍帯血由来幹細胞
今回は間葉系幹細胞のうち、臍帯血由来の幹細胞について解説していきます。
ご存じのことと思いますが、臍帯血とは胎盤と臍帯(へその緒)の中にある血液のことを言います。
その歴史は今から40年余り前の1980年年代前半に臍帯血に造血幹細胞が含まれていることがわかったことから始まります。
造血幹細胞は白血球や赤血球、血小板などを造ることができます。白血病をはじめとした血液疾患患者に移植する手術など、その可能性に期待が寄せられましたが、採取できる量が少ないため、臨床応用することは難しいと考えられていました。
しかし、1988年、臍帯血を使った最初の移植医療がフランスで行われます。Gluckman博士らはファンコーニ症候群(近位尿細管の全般性溶質輸送機能障害により,本来近位尿細管で再吸収される物質が尿中への過度の喪失をきたす疾患群)の患者に臍帯血移植を試みて成功したのです。
日本では、1994年に臍帯血移植が行われたのが第一例ですが、その後、臍帯血移植の手術症例数は世界最多と言われており、古いデータですが、2012年5月段階での臍帯血移植の総件数は8,400件超という結果が報告されています。この数字は世界の総臍帯血移植件数の約1/3を占めているそうで、現在では年間1,200~1,300例が実施されているようです。
臍帯血由来幹細胞と骨髄由来幹細胞と比較してみると、先述したように採取量が少なかったり、生着不全の可能性があるなどの欠点もありますが、提供者に対する侵襲を伴わないことや、拒絶反応が少ないことなどの利点もあるため、国を挙げて技術の向上や公的臍帯血バンクの設立・運営に力を入れてきています。
先の欠点に挙げた生着不全の可能性などについても、2018年に関西医科大学が世界で初めて臍帯血由来幹細胞の純化に成功したと報告されました。単一細胞レベルでの移植実験や遺伝子解析が可能な水準まで超高度に純化することによって、より詳細な研究が可能となり、臍帯血由来幹細胞の細部を解明することで欠点を解決できる道が開けたと言えるのではないでしょうか。
数十年少子化が続く日本において、臍帯血由来幹細胞の確保は大きなハードルかもしれませんが、より研究の精度を高めることで多くの患者を救う一手になる存在であることは確かです。