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3つの幹細胞の成り立ち〈iPS細胞編〉

第8回目:3つの幹細胞の成り立ち〈iPS細胞編〉

前回では、あらゆる細胞に分化できる能力を持った受精後間もない細胞をシャーレの中で培養することができるようになったES細胞について触れました。しかし、倫理的な問題などからその研究には制約がかかり、大きな進展は望めない状況にあるのが現状です。
そこで受精後間もない細胞ではなく、成長したヒトの皮膚の細胞をどうにかES細胞と同様に多様性を持たせることができないかと研究開発されたのが「人工多能性幹細胞」、いわゆる「iPS細胞」です。
iPS細胞は、患者自身の皮膚の細胞から作り出すことができるため、ES細胞が抱える各種の問題を解決できる可能性があります。

では、その歴史を振り返ってみましょう。

 

iPS細胞の歴史は新しく、2006年当時、京都大学の山中伸弥教授は、ES細胞のようにあらゆる細胞に分化できる能力を持った細胞を作り出すことに成功し、iPS細胞と名付けられました。
そして6年後の2012年には、その成果によって山中教授にノーベル医学・生理学賞が授与されたことは記憶に新しいと思います。日本中がiPS細胞の可能性にときめき、これによって再生医療の未来が開けたかのような報道が社会を席巻しました。
その後、2013年11月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行され、日本でも多くの臨床や治療が行わうことができるようになりました。早速翌年、世界で初めてiPS細胞からつくった網膜色素上皮細胞の移植手術が実行されており、現在でもこの手法は継続されているようです。

さらに、2022年には慶応大学グループが、世界で初めて脊髄損傷の治療にiPS由来の細胞を移植しており、iPS細胞に掛かる期待は大きくなると思われていましたが、その前途に暗雲が広がっていました。
さかのぼること3年前の2019年、政府はiPS細胞の研究支援資金の打ち切りを発表していました。これにはさまざまな理由があると言われていますが、1つ大きな問題がありました。
その問題とは、iPS細胞を作成時に発癌に関連する遺伝子を用いているため、細胞が癌化してしまうリスクがあるということです。このことは当初からわかっていたそうですが、研究を進める過程で解消できると考えられていたようです。しかし、癌化の解消は現在では見込めておらず、実用化までには相当な年月がかかると言われています。

次回は、体性幹細胞について要約していきます。

 

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